2006年12月12日火曜日

製油所と「海事都市 今治」その5

この写真は製油所全体を見渡すことができる最も高い建物から撮影したものです。製油所の中には石油製品を製造するための様々な施設があります。ここで製造された製品を写真の石油タンク側の出荷用桟橋から出荷しています。
この製油所では、精製される原油等は100%海上から受け入れ、原油から作られた製品は85%が海上輸送されるため、海運が非常に重要な役割を果たしています。その重要な役割を担う船上のクルーは「来島海峡をはじめとする航海で、安全航行を常に心がけ、海洋汚染防止にも注意しながら、危険物を運ぶ気の抜けない海上輸送を行っています。忙しい冬を迎え、気象条件も悪くなる季節ですが、より一層の安全航行を心がけます。」とのことでした。
旧来の菊間町と製油所との結びつきが、合併した今治市となって、これまでの結びつきに加えて、この製油所に原油を運ぶ船が今治市に本拠を置く造船グループで建造された船であったり、製品を運ぶ船も今治市の海運会社の船であったりと、同じまちとして「海事都市 今治」が機能している姿をこの製油所に見ることができます。

2006年12月11日月曜日

製油所と「海事都市 今治」その4

写真は、沖側に見える大きなタンカーから運び込まれた原油が、製油所で石油製品となって出荷桟橋から手前の船に積み込まれ出航する様子です。製油所から桟橋を通して石油製品ごとにパイプが配置され、出荷船に積み込みます。そのときは船員、製油所社員共同で安全に注意しながら積み込み作業に従事しています。
出港時には石油製品が満載されているため、写真のように船と海面の差がほとんどなくなり、船体の赤いライン(喫水線)がちょうど水面にきています。それと比べると、向こう側の大きなタンカーは荷揚げ完了間近のため、船体のほとんどが海面上に出ており、船体の大部分を見ることができます。
このように出荷船が年間4600隻以上出航しますが、その大半が1000トン以下の内航船で、その中には今治市内の内航船が多く含まれています。国内の輸送手段としてはいろいろありますが、陸上輸送に比べ、少ない燃料で大量の製品が運べる、しかも環境にやさしい内航海運(海上輸送)を物流の主役にしようとする「モーダルシフト」が注目されています。この製油所も環境にやさしい内航船を積極的に使っています。
こうして出航した船が各地へ石油製品を運び、皆さんの安定した生活に結びついています。

2006年12月7日木曜日

製油所と「海事都市 今治」その3

写真のタンカーですが、これは入港待ちのため、停泊しているのではありません。「その1」の写真右上にある巨大タンカーが停泊しているところ、実はここが「シーバース」という入荷用施設で、最大30万tクラスのタンカーを周りに見える5点のブイで係留し、船の中央部分と海底配管(約70センチのパイプ)をドッキングして手前のタンクへ原油を荷揚げしているのです。
このタンカー、サウジアラビア及びイエメン等の中東にて積荷して20日間かけて月に1回程度日本に来ます。1時間に1万klを(ドルフィンバースの倍の速さ)、原油タンクに送り込み揚荷は2日程度で終わります。30万tクラスの巨大タンカーですと写真の中の大きな原油タンク(10万kl)3杯分くらいを運んできます。
前回紹介したドルフィンバースに入荷のために寄港するタンカーもあわせると年間に大小約50隻以上の原油タンカーが石油の安定供給のために寄港しています。写真のタンカーは原油の荷揚げ作業を終えて、出港の作業に取りかかっているところです。
今治市菊間町の海岸線を通過するとき、原油を運ぶ大きなタンカーを見ることができるかもしれません。

2006年12月6日水曜日

製油所と「海事都市 今治」その2

前回写真の海上左側に見える大きなタンカーが着桟する入出荷用桟橋「ドルフィンバース」に着桟するタンカーの写真です。入荷用施設は二つあり、こちらの桟橋には最大10万tクラスのタンカーが着桟できます。ここには原油をインドネシアなど東南アジアから日本に1週間ほどで運ぶタンカーが月に3隻~4隻、あわせて年間約40隻も入港する他、製品出荷のためのタンカーも入港しており、それらを含めると年間約1000隻入港します。
 写真の船や定期的に入港する船は10万tクラスですが、今治市の造船会社グループが建造した船もあり、担当の方は船の特徴から「このタンカーはどこの造船所で造った船だ」とすぐ分かるそうです。ちなみにこの船はシンガポール船籍で、船の上は外国になります。
 この船がこの製油所にある一番大きな原油タンク1個分を運んできます。船からは写真の4つある滑車付の白いパイプ(ローディングアーム)を通じて桟橋に設置されているパイプを通り、陸上の原油タンクへ荷揚げされます。桟橋には直径約60センチのパイプが設置されており、船から毎秒ドラム缶7,8個!を送り出すため、これだけ大きな船にかかわらず、荷揚げは1~2日で終わります。

2006年12月4日月曜日

製油所と「海事都市 今治」その1


先日、今治市菊間町にある製油所にお邪魔しました。この四国でも最大級の製油所と「海事都市 今治」のつながりについてご紹介したいと思います。
この製油所はご存知のとおり、皆さんの生活に欠かせないガソリンや、灯油、軽油やジェット燃料などの石油製品また石油化学の基礎原料などを主に製造していますが、最近では燃料電池の開発も行っています。以前からこの製油所には多くの今治市民が働いており、また、地域の行事取り組みに協力するなど、実生活の様々な面で密接なつながりを持ってきました。
この地域では古くから菊間瓦の製造、出荷に海運業が結びつき発展してきた歴史があります。現在はこの製油所が石油製品を製造する原料の原油を輸入したり、製造した石油製品を出荷する最大の手段が海上に見える大小のタンカーであり、海運業とのつながりは欠かせないものがあります。
写真上で左側に見える白い大きな船が停泊している桟橋を「ドルフィンバース」、右上の赤い巨大船を係留しているところを「シーバース」と呼びますが、次回はこの「ドルフィンバース」についてお話します。

2006年11月1日水曜日

対立するクレーン群

今治市には数多くの造船所が集積していますが、造船所のシンボル的存在が、大きなクレーンだと思います。クレーンが絶えず動いている姿に現在の造船業の活況を感じることができます。このクレーン、たくさん種類のあるクレーンのうちの1種類で、ジブクレーンといいます。ジブ(肘=アーム)の先端の滑車にワイヤーを通してモノを吊る構造のクレーンのことをそのように呼ぶそうです。
皆さんは、このジブクレーンが今治市にどれくらいあるかご存知でしょうか。先日来、私どもが造船所を訪問させていただいたときに数えてみたところ、大小あわせて100本以上ありました。ひとつの市にこれだけのジブクレーンがあるのも造船所が集積する「海事都市 今治」だけかもしれません。
最近は、日が暮れるのも早くなったこともあり、夕方ともなるとクレーンのライトが煌々とともり、きれいに浮き上がります。この様子と来島海峡大橋のライトアップの日が重なると、今治だけでしか見られない景色が広がっています。クリスマスの前後に、カクテル光線のライトアップなどを考えてみると面白いかもしれません。皆さんも是非一度ご覧になってみてください。

2006年10月10日火曜日

船長の愉快な講義 世界の海体験談

10月6日、「船長の愉快な講義、世界の海体験談」が北郷中学校にて開催されました。これは今治市内の外航海運会社の方々の発案で、弓削商船高専の同窓会のご協力を得て実施されたものです。講師には弓削商船高専OBで商船三井客船㈱名誉船長の渡辺輝夫氏をお招きしました。講演では渡辺名誉船長が船長として世界各地を客船日本丸やふじ丸で回った経験をスライドを交え生徒とPTAにわかりやすく話していただきました。
太陽が水平線に隠れる際、いろんな気候条件が重なって太陽がエメラルドグリーンに輝く「グリーンフラッシュ」と呼ばれる現象が見られるのはとても稀だそうで、グリーンフラッシュを見ると幸せになれるとの言い伝えがあり、この非常に貴重な写真を最後に講演を締めくくられました。
この取組は、海事都市構想を進める上で、「海事関連人材の育成に向けた学習環境を整備する仕組みづくり」に繋げようとするもので、今後も市内でこのような「船の夢」に触れる機会を設けて将来の海事都市「いまばり」を担う次世代にむけた啓発を行いたいと考えています。

2006年9月15日金曜日

船員就業フェア

9月9日、「2006船員就業フェアin IMABARI」が 四国運輸局主催により今治地域地場産業振興センターにて開催されました。これは船員の雇用のチャンスを拡大するため、海運事業者の企業説明会及び就職面接会を実施するもので、平成17年度は、神戸、福岡、東京で開催され、延べ77社の企業及び390名の求職者が参加し、52名の内定に結びついています。今年度は今治を含む5ヶ所で開催が予定されており、6月に神戸で開催されたものに続く第2回目のものです。
フェアには地元今治を含めた県内の海運会社のみならず、県外も含め20社を超える企業が参加しました。波方海技短大学生をはじめ、弓削商船高専学生や船員経験者の方など100名を超える多数の就職希望者が訪れ、企業からの自社アピールを真剣な面持ちで聞いていました。
このように大変有意義なフェアが、大都市圏以外の今治で開催されたことは「海事都市今治」として果たす役割が注目されているからだと考えています。この潮流に乗って皆さんが魅力のある今治の海運会社に就職し、ご活躍いただくことで「海事都市今治」の更なる発展に繋がるならば、これほどありがたいことはないと感じています。

2006年8月7日月曜日

船員の卵

今治圏域には、将来の船員を育成する次世代人材育成機関として国立波方海上技術短期大学校(写真は体験入学の操船シュミレーター)と国立弓削商船高等専門学校が存在します。両校ともに全国的に貴重な船員育成学校で、学生も全国各地から集まり、卒業時には高い就職率を誇っています。7月~8月には両校で来年度の入学希望者に対する体験入学会等が実施され、学校の紹介を行っています。
現在、船員不足は逼迫していると共に、船員に要求される技量も高くなってきています。そのため、直接船員の教育機関を設立している企業もあります。
今治圏域においても、国立弓削商船高等専門学校には「専攻科」が設けられ、より高度な技術を習得出来るようになり、国立波方海上技術短期大学校は国土交通省所管の全国で2校しかない高卒者対象の教育機関に昇格したことに合わせ、平成17年度から募集定員を80名から90名に増員しています。
入学を目指す皆さんも海や船に対する夢や希望をふくらませているところだと思います。「今治は海事産業が集積しているところなので船関係のことを勉強するには一番良い」という話を聞きます。この恵まれた地域で学校生活を過ごした卒業生が船員となって船を動かし、人や物を運ぶことで私たちの生活が成り立っています。その船員を目指す皆さんは是非、この今治の地で本物の船員を目指してください。
(両校紹介のホームページはこちら(LINK)

2006年7月3日月曜日

造船マンの巣立ち

平成18年6月30日に今治地域造船技術センターの終了式がありました。今年で2回目となる造船マンの次世代育成事業ですが、今年度は昨年度よりも15名多い76名が巣立ちました。
4月から3ヶ月にわたる研修で会社の垣根を越えて造船会社から派遣されたベテラン工の先生に技術の継承を受け、新入社員だと3年間くらいかかる技術をこの期間で習得することが出来るそうです。
6月に技術センターにお伺いしたときも溶接の実習で火花が飛び散る中、玉のような汗をかいて研修を受けていましたが、これからは現場のもっと暑い中でベテランに混じって本物の船を造って行く事になります。
技術センターで培った技術を現場で活かして、これからは皆さんが「今治の船」を送り出してください。

2006年6月1日木曜日

まちと共生する造船業

今治市大西町の藤山公園から造船所を臨む風景です。今治市内では数多くの造船所が操業をしていますが、写真のように造船所のクレーンが間近に見える公園がたくさんあり、まちなみの風景に一体化している様子が見られ、地域の方々の生活にも溶け込んでいる様子がうかがえます。
先日の大西地域の地方祭でも大西地域にある造船所に勤務する方々が神輿をかついで神輿唄とともにまちをねり歩いている姿が見られました。
造船所も、そこに勤める皆さんも地域と共生している様子が伺われ、今治市に暮らしている私たちも世界でも有数の規模である造船所の存在が身近に感じることができます。
造船所が活況であることで、さまざまな好影響を地域の方々にもたらし、相互に共生する関係を育ててゆくのではないかと思います。

2006年5月2日火曜日

「しまなみ海道と海事都市」

沿線住民のみなさんにとっても待望のしまなみ海道が全線通行可能となりました。これまで開通に向けて努力された関係者の皆さんの熱意には頭が下がります。
そのしまなみ海道と造船所のクレーンが見えるところです。しまなみ海道を通行していると愛媛県側・広島県側にかかわらず、いたるところに造船所のクレーンを見ることができます。しまなみ海道沿線にはこのように多数の海事関連の事業所が集積しています。クレーンのそばの岸壁には大きなタンカーが横付けされ、竣工すると、港と港を結び物資などを運び経済を支える重要な役目を担います。
しまなみ海道も船も人と物を運ぶ重要な役目を果たしていきますが、これからもそれぞれの長所を生かした物流の核であり続けて欲しいと思います。

2006年4月1日土曜日

受け渡し式

船が完成するまでの節目の一つに、“受け渡し式”という儀式があります。
これは、船が完成し処女航海に向け出航する日、船を造船所から船主に引き渡す儀式のことを言います。進水式ほどの大きなセレモニーはありませんが、船主・荷主・傭船者・業者・工事関係者が集まり、出来上がった船の安全と航海の無事を祈願しつつ、大海原へと乗り出す船を見送ります。

平成18年4月1日、多くの方々からのご要望により、“海事都市推進課”が新設されました。“海からのまちづくり”にこだわった海事都市構想を羅針盤に、乗組員(課員)4名で、何とか航海に乗り出しました。もし皆様のところに寄港(ご相談)いたしました際は、どうぞお力をお貸しいただけますようお願い申し上げます。